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漫才を認知心理学から考えてみた

いまさらながらでありますが、2019年のM1グランプリは「ミルクボーイ」が優勝しました。(この記事は2020年3月に執筆)

自分は「ミルクボーイ」という漫才師をM1決勝当日の生放送で初めて名前を知りました。当然彼らの漫才そのものを初めて見たわけですが、1本目の「コーンフレーク」ネタは、自分史上でもかなり上位にくるおもしろい漫才でした。

 

それから年が開け、個人的には素人ながら認知心理学言語学をかじり出したわけでして、そこで「スキーマ」という概念を知ります。この「スキーマ」をくわしく解説しているものを読んでいるときに(ミルクボーイのコーンフレークは、この概念を使うとよりわかりやすくなるのではないか?)と思い立ったわけであります。

 

まだ認知心理学の表面しか理解していませんが、今後のお勉強のためにいまのところ理解したところを記事に残すことにします。

 

 

スキーマとは?

 まず、「スキーマ」とはなにか?です。

最もあっさりした説明をすると「体験や知識が体制化されたもの」となります。

 

例えば「顔」を例にします。

顔にあるものといえば、目、鼻、口、・・・などです。そしてそのパーツの位置関係はある程度決まっています。また、他の要素としては肌の艶、しわの有無、それぞれのパーツの形などがあります。さらには20代女性の顔、60代女性の顔など、大まかな年齢別の顔のイメージなどもできるはずです。

 

このようなことを「顔」のスキーマ、という言い方をします。

もっと細かくなると

「目」についてのいろいろな要素(「目」のスキーマ

「口」についてのいろいろな要素(「口」のスキーマ

なども考えることができます。

 

では、この「スキーマ」の役割は何でしょうか?

 

AさんとBさんが会話しているとします。

A「最近Cさんの鼻の横にニキビができてさぁ~」

B「そうなの?」

Aさんは、Bさんが直接Cさんの顔を見ていないとしても、ある程度顔についてのイメージや言葉の意味は理解できているはず、という前提で話しています。

 

また、相手方のほうもAさんがどんな目的でこの会話を言い出したのか?本人が口にしなくてもある程度予想がつくこともあります。お互いの仲がいい関係なら今までの会話や行動などの前例やたくさんの共通認識があるため、そこからある程度の想像ができるためです。

 

これがもしBさんが

(顔ってなんだ?)

(横ってどっち?)

(ニキビって食べものだっけ?)

なんて思っていたりすると、とたんに会話が噛み合わなくなります。

 

Bさんから「横ってどっち?」なんて聞かれれば会話を成立させるために「横」の説明をしないといけません。

A「最近Cさんの鼻から向かって左耳の方に2センチくらいのところにニキビができてさぁ~」

なんてことまでいわないといけないかもしれません。

 

人間同士の会話がすんなり成立しているのは、かなりのことを省略しても相手方の知識などを利用することで、お互いの合意のある部分、共通している知識などの説明を省いているからです。もちろんお互いの知識が共通していない場合は、その部分の説明を省くと、とたんに何を言っているのかわからなくなってしまいます。

 

スキーマ」のおおよその説明はこんなところです。

 

 

 

 

「ミルクボーイ」のコーンフレーク

 

M1決勝1本目のコーンフレークネタです。おかんが大好きな朝ごはんの名前を忘れます。そしてその特徴を言ってもらってそれが何かを考えていきます。

 

「それはコーンフレークやないか」

コーンフレークの特徴をいくつか挙げていきます。

 

・「甘くてカリカリしてて、牛乳とかかけて食べるやつや」

 

・「なんであんなに五角形の栄養バランスがでかいのかわからない」

⇨「あれは自分の得意な項目だけで勝負している」

「牛乳の栄養素を含んだ上での五角形になっている」

 

・「子供のころなぜかみんな憧れた」

⇨「コーンフレークとミロとフルーチェは憧れた」

 

・「パフェとかのかさ増しに使われている」

 

・「食べきるときに何に感謝したらいいかわからない」

⇨「生産者さんの顔が浮かばない」

「浮かんでくるのは腕組んでるトラの顔だけ」

 

 

 

 

 

「それはコーンフレークではないなぁ」

コーンフレークを否定する特徴を挙げていきます。否定しつつコーンフレークの特徴を自虐的に返答しています。

 

・「死ぬ前の最後のご飯もそれでいい」

⇨「コーンフレークはまだ寿命に余裕があるから食べてられる」

「コーンフレークも最後のご飯に任命されたら荷が重い」

 

・「晩御飯で出てきても全然いい」

⇨「晩飯でコーンフレークが出てきたらちゃぶ台ひっくり返す」

「まだ朝の寝ぼけてるときやから食べてられる」

「食べているうちに目が冷めてくるから最後にちょっとだけ残す」

 

・「お坊さんも修行のときに食べてる」

⇨「精進料理にカタカナのメニューは出てこない」

「朝から腹を満たしたいという煩悩の塊」

 

・「ジャンルでいうたら中華や」

⇨「回したとき全部飛び散る」

 

・「おかんが言うにはコーンフレークではない」

 

 

ネタの進行と順番は多少前後しますが、ほぼ全文を挙げてしまいました。

 

 

そこでこのネタを「スキーマ」をとりいれて考えてみます。

 

 

 

「自分」と「ミルクボーイ」の「コーンフレーク」スキーマ

 「スキーマ」は「体験や知識が体制化されたもの」ということなので、実は人それぞれにそれぞれのスキーマがあるはずです。

 

個人的には「コーンフレーク」は、人生の中でもほとんど食べていませんが、ある程度の知識や「コーンフレーク」にまつわる体験が多少ですがあります。小学校のときは朝食でコーンフレークをねだったこともあります。(実際には、食べてみて何度も食べたい気分にはならなかった)

自分の方にある「コーンフレークのスキーマ」と「ミルクボーイ」のネタがほぼ同じだったので、(そういうこともあったなあ)と笑えるわけです。もし、「コーンフレーク」をねだったことがなければ(コーンフレークとか食べたいって思うのか?)となる可能性もあります。

 

こうして改めてネタを見てみると「コーンフレークとはこういうもの」となっています。もっと考えれば、さらにたくさんの要素があるはずですが、ネタ用にいくつかをピックアップしたものでしょう。(あくまでも推測)

 

このネタの中の「ミルクボーイ」側の「コーンフレークのスキーマ」と自分側の「コーンフレークのスキーマ」がほぼ一緒でした。なので

(なんのことを言ってるのかよくわからない…)

という箇所はありませんでした。そのせいもあってこのネタが最初から最後まですんなり頭の中に入ってきた、ということと思われます。

 

まとめ

双方向同時に進行する会話にしても、片方から発信する文章にしても、「相手側のスキーマ」をイメージすることはとても大事なことになります。また、自分と相手のスキーマが100%一致することはないので、説明が必要となるところは必ず出現します。そのときにすんなり相手が理解できるように説明する手間を惜しんではいけないということになります。

 

今回はこんなところで。