行列の積

今回は行列をかけ合わせます。

行列の和、差についてはこちらへ↓

 

条件

行列同士を掛け合わせるには条件があります。

行列Aと行列Bの積ABを行うためには,

Aの列数とBの行数が等しくなければならない。

 

① $A=\begin{pmatrix} 列1 & 列2 \\ 列1 & 列2 \end{pmatrix}$と $B=\begin{pmatrix} 行1 & 行1 \\ 行2 & 行2 \end{pmatrix}$

は「Aの列数とBの行数が等しい」のでOK。

 

② $A=\begin{pmatrix} 列1 & 列2 \\ 列1 & 列2 \\ 列1 & 列2\end{pmatrix}$と $B=\begin{pmatrix} 行1 & 行1 & 行1\\ 行2 & 行2 & 行2 \end{pmatrix}$

は「Aの列数とBの行数が等しい」のでOK。

 

③ $A=\begin{pmatrix} 列1 & 列2 \\ 列1 & 列2 \\ 列1 & 列2 \\ 列1 & 列2\end{pmatrix}$と $B=\begin{pmatrix} 行1 & 行1 & 行1\\ 行2 & 行2 & 行2\\ 行3 &行3 &行3 & \end{pmatrix}$

は「Aの列数とBの行数が等し」くないのでNG。

 

となります。

 

計算方法:

$A=\begin{pmatrix} 1 &  2 \end{pmatrix}$,$B=\begin{pmatrix} 3 \\ 4 \end{pmatrix}$とします。

Aは(1行,2列)型、Bは(2行,1列)型。よって「A=2列、B=2行」なのでOK。

 

$AB=\begin{pmatrix} 1*3+2*4  \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} 3+8  \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} 11 \end{pmatrix}$

計算方法はベクトルと同じなのですが、計算結果について、ベクトルは「数」行列は「1行1列型の行列」なので()をつけています。

文字にすると

$\begin{pmatrix} a & b  \end{pmatrix}$$\begin{pmatrix}c \\ d \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} ac + bd \end{pmatrix}$

となります。

 

2行2列行列と2行2列行列の積は

$A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$、$B=\begin{pmatrix} p & q \\ r & s \end{pmatrix}$ とすると

$AB=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}\begin{pmatrix} p & q \\ r & s \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} ap+br & aq+bs \\ cp+dr & cq+ds \end{pmatrix}$

となります。

 

その他の行列では

・(1行3列)×(3行1列) ∴3列⇔3行

$\begin{pmatrix} a & b & c  \end{pmatrix}\begin{pmatrix} p \\ q \\ r  \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} ap + bq + cr\end{pmatrix}$

 

・(2行2列)×(2行1列) ∴2列⇔2行

$\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}\begin{pmatrix} p \\ q  \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} ap + bq \\ cp + dq\end{pmatrix}$

 

・(1行2列)×(2行2列) ∴2列⇔2行

$\begin{pmatrix} a & b \end{pmatrix}\begin{pmatrix} p & q \\ r & s  \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} ap + bq & cp + dq\end{pmatrix}$

 

・(2行3列)×(3行2列) ∴3列⇔3行

$\begin{pmatrix} a & b & c \\ d & e & f \end{pmatrix}\begin{pmatrix} u & v \\ w & x \\ y & z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} au + bw+ cy & av + bx + cz\\ du + ew + fy & dv + ex + fz   \end{pmatrix}$

こんな感じになります。

 

行列の積の計算法則

A、B、Cを行列、kを実数とすると以下が成り立つ。

・k(AB)=(kA)B=A(kB) :kはいつ掛けても同じ。

・(AB)C=A(BC):結合法則 3つの行列の積は計算の順序によらない。

・分配法則:

(A+B)C=AC+AB

A(B+C)=AB+AC

 

ただし、一般には交換法則は成り立ちません。

$A=\begin{pmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{pmatrix},B=\begin{pmatrix} 2 & 4 \\ -1 & 1 \end{pmatrix}$とすると

$AB=\begin{pmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 2 & 4 \\ -1 & 1 \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} 1*2+(-1)*(-1) & 1*4+(-1)*1 \\ 2*2+(-3)*(-1) & 2*4+(-3)*1  \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} 3 & 3 \\ 7 & 5 \end{pmatrix}$

 

$BA=\begin{pmatrix} 2 & 4 \\ -1 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} 2*1 + 4*2 & 2*(-1) + 4*(-3) \\ (-1)*1 + 1*2 & (-1)*(-1) +1*(-3) \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} 11 & -14 \\ 1 & -2 \end{pmatrix}$

 

行列の割り算

単位行列

まずは、どんな数を1倍しても、答えは元の数と変わりません。

1・a = a・1

が成り立ちます。

行列の積で1に相当する行列を単位行列といいます。

単位行列は対角成分が1でそれ以外の成分が0である正方行列です。

例:

$\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$や $\begin{pmatrix} 1 & 0& 0 \\ 0 & 1 & 0\\ 0 & 0& 1 \end{pmatrix}$ です。

 

では、実際に掛け合わせてみましょう。

$A =\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$とします。

$B=\begin{pmatrix} -1 & 2 \\ -3 & 4 \end{pmatrix}$とすると

$AB=\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} -1 & 2 \\ -3 & 4 \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} 1*(-1)+0*(-3) & 1*2+0*4 \\ 0*(-1)+1*(-3) & 1*2+1*4 \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} -1 & 2 \\ -3 & 4 \end{pmatrix}$

$BA=\begin{pmatrix} -1 & 2 \\ -3 & 4 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} (-1)*1+2*0 & (-1)*0+2*1 \\ (-3)*1+4*0 & (-3)*0+4*1 \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} -1 & 2 \\ -3 & 4 \end{pmatrix}$

よって定義はこうなります。

任意の行列n次行列Aに対して

$AX=XA=A$

を満たすn次正方行列Xをn次の単位行列といい、EまたはIであらわす。単位行列Eは対角成分がすべて1の対角行列である。

 

割る=逆数を掛ける

そして割り算のお話です。通常の割り算は
$a \div b = \frac{a}{b}$としますが、逆数を掛ける、という方法もあります。

$a・\frac{1}{b} = \frac{a}{b}$

逆数は指数表示すると

$\frac{1}{b} = {b}^{-1}$

となります。

そこで、行列の割り算も「逆数を掛ける」という考え方をしてみます。

$\frac{1}{b} ・b=1$のように、ある行列に掛け合わせると1(単位行列)になる逆数のような行列(逆行列という)を計算すればいい、となります。

逆行列の定義:

正方行列Aに対して

$AX=XA=E (Eは単位行列)$

となる行列を逆行列という。

${A}^{-1}$で表す。

※逆行列は正方行列のみに対して考えるもので、正方行列でない行列に対しては考えない

 

ここでは数式の成り立ちはおいときまして、結論を先に書いておきます。

 

逆行列:

$A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$に対して、$ad-bc \neq 0$ のとき

${A}^{-1}=\frac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} \frac{d}{ad-bc} & \frac{-b}{ad-bc} \\ \frac{-c}{ad-bc} & \frac{a}{ad-bc} \end{pmatrix}$

$ad-bc \neq 0$とあるのは0で割れないからですね。行列も逆行列がない行列があります。

逆行列を持つ行列を正則行列、逆行列を持たない行列を非正則行列といいます。

 

2次正方行列$\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$について

$ad-bc \neq 0$のときAは正則行列

$ad-bc = 0$ のときはAは非正則行列

となります。

 

連立1次方程式を解く

逆行列を求めて行列の割り算ができるようになると、連立1次方程式が解けるようになります。

例:

$\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x + y = 10 \\ 2x + 4y = 32 \end{array} \right. \end{eqnarray}$

文系高卒おじさん的な解き方は、代入か2つの式を足したり引いたりするやり方になります。

2つの式を足したり引いたりしてみましょう。

$\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x + y = 10 -①\\ 2x + 4y = 32 -② \end{array} \right. \end{eqnarray}$

 

$①*2 $

$\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 2x + 2y = 20 -①\\ 2x + 4y = 32 -② \end{array} \right. \end{eqnarray}$

 

$①*2 – ②$

$-2y = -12$

$y = 6$

 

$①より$

$x + 6 = 10$

$x = 4$

 

$\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x =4 \\ y = 6 \end{array} \right. \end{eqnarray}$

となりました。

 

逆行列を使う

逆行列を使って解いてみます。

例の再掲:

$\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x + y = 10 \\ 2x + 4y = 32 \end{array} \right. \end{eqnarray}$

方程式を行列で表します。

$A=\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 2 & 4 \end{pmatrix},b=\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$とすると

$A=\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 2 & 4 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} x + y \\ 2x + 4y \end{pmatrix}$となるので、

 

$c=\begin{pmatrix} 10 \\ 32 \end{pmatrix}$とおくと、連立方程式は

 

$Ab=c$

$\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 2 & 4 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 10 \\ 32 \end{pmatrix}$

と表せます。

 

そして、$Ab=c$ に逆行列 ${A}^{-1}$ を掛けます。

${A}^{-1}(Ab)={A}^{-1}c$ :結合法則

$({A}^{-1}A)b={A}^{-1}c$

$\mathit{E}b={A}^{-1}c$:逆行列の定義 ${A}^{-1}{A}=\mathit{E}$ より

$b={A}^{-1}c$ :$\mathit{E}$ を掛けてももとのまま

となります。

 

よって

$\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}={A}^{-1}c$

 

$ad-bc=1*4-1*2=2\neq0$ なので

逆行列 ${A}^{-1}$は

${A}^{-1}=\frac{1}{2}\begin{pmatrix} 4 & -1 \\ -2 & 1 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 2 & -\frac{1}{2} \\ -1 & \frac{1}{2} \end{pmatrix}$

よって

$\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 2 & -\frac{1}{2} \\ -1 & \frac{1}{2} \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 10 \\ 32 \end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} 2*10+(-\frac{1}{2})*32 \\ (-1)*10 +\frac{1}{2}*32\end{pmatrix}$

$=\begin{pmatrix} 4  \\ 6  \end{pmatrix}$

 

連立方程式の答えになりました。

 

まとめ

行列の積になると和、差よりかなり計算が複雑になります。逆行列を使うときに、対応する成分を間違えないようにしましょう。

今回はここまで。